ランデヴー II
外に出ると時間が時間だからか、人の気配は全くなかった。


真っ暗な道を、店の明かりと街灯がポツポツと照らすだけ。


とりあえず駅に向かわなくては……倉橋君をこのまま1人で帰して、大丈夫だろうか。



「倉橋君、家まで帰れる? 私、引越ししたから方向違うけど……」


「んー……はい、そうかもしれません……」


彼はまだ酩酊状態らしく、コクコクと頷きながらのんびりと答えにならない言葉が返ってくる。


……やはり、家まで送った方がいいのかもしれない。



でも私は詳しい倉橋君の家の場所を知らなかった。


電車で連れて行って戻るとして、終電に間に合うだろうか。


いや……帰りはタクシーになるかもしれない。


そう考えを巡らせながら、抱き合うようにして表通りへと向かう。



すると不意に、倉橋君の足がピタリと止まった。


怪訝に思いその顔を見ると、吐息を感じる程近くに彼の顔があることに気付く。


一瞬ドキッと胸が高鳴るも、その目はぼんやりと地面を見つめていた。
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