ランデヴー II
するとその反動なのか、バランスを崩した彼の体がふらりとこちら側に倒れ込みそうになる。


どうやら私が力を入れ過ぎたらしい。



「ちょ、倉橋君!」


慌てた私は倉橋君の体を支えようと、思わずコートを掴んだ。


だが――。



「え? わっ」


倉橋君の体は容赦なく私に向かい、為す術もなく2人一緒にその場に倒れ込んでしまった。


思い切りお尻を地面に打ち付け、鈍い痛みが走る。



「いった……。もう……倉橋君、何なの?」


重く私にのしかかる体を無理矢理起こして立たせようとするが、倉橋君はその場に力なくしゃがみ込んだまま立つ気配はない。


困った私は彼の肩に手をかけ、その顔を覗き込んだ。



「家に帰らないって、どういうこと?」


「……坂下さんには関係、ないですから。もう、行って下さい」


目を伏せたままポツリとこぼす倉橋君を見て、私は一瞬唖然としてしまった。


そしてその後に湧き上がってきた感情は、苛立ちだ。
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