ランデヴー II
陽介との間に起こった出来事は、私の中ではかなり風化してしまっていた。



それよりも私には、もっと別の記憶が色濃く残っていた。


陽介と別れた後に出会った、1つの恋。


叶わなかったが、確かに私は彼のことが好きだった。



もう忘れたと思っていても、そのことを思い出すと未だ胸がチクリと痛む。


私が恋愛に消極的なのは、もしかしたらそれが原因なのかもしれないと。


認めたくないが、今でも彼への気持ちは複雑な想いとなってこの胸に居座っていた。



忘れたいのに完全に消し去ることができない。


陽介のことのようにするりと通り抜けられないこの気持ちに、少し苛立つ。



違う。
彼のことは、もういいのだ。



私は、この新しいときめきに身を任せたい。


やっとドキドキできる人が現れたのだから、この気持ちを、その人を大切にしたい。


もう、後悔はしたくないから。



私は自分にそう言い聞かせた。
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