ランデヴー II
でも今――。


彼に天気予報を教えてくれる人は、いない……。


一気に胸に押し寄せる感情は、罪悪感。



「――入って」


気付くと私はそう言い、解錠ボタンを押していた。


いくら何でもこのまま帰す訳にはいかないし、濡れた体を拭き、傘を持たせたかった。



嫌いになって別れた訳じゃない。


それどころか、今だって同期で大切な友人だ。


親しく話をすることはなくなってしまったが、もしも以前のように戻れるなら……胸の奥底で、本当はそう願っている。



心の片隅で倉橋君の存在を感じながらも、この時の私には賢治を追い返すことなんてできなかった。
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