ランデヴー II
壊れそうな程に一気に心臓が波打つ。


ドクドク、としつこいくらいに。



私は賢治の腕の中にいた。


ギュッと強い力で抱き締められ、そして知った。


自分の考えがどれだけ甘く、浅はかだったかを。


それは絶望にも似た、悲しみだった。



「ゆかり……俺達、本当にもうダメなのか……?」


切なげに耳元で吐息と共に絞り出す声は悲痛で、私の心を引っかき回す。


ガリガリと抉られるような胸の痛みと強く回された腕に、私は身動きが取れなかった。



体温で温められた水がじわじわと私の洋服に染みてくるのを感じる。


髪の毛も、肌も。


今私の体は賢治という熱に冒されているようだった。



と、その瞬間。



――ピンポン、と。


インターホンの音が、部屋中に鳴り響いた。
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