ランデヴー II
「俺はお前のこと……まだ吹っ切れてないから。こんくらいの意地悪させろよ」


振り返ることなく頼りなげに呟く賢治の背中を、息を呑んで見つめる。



あぁ、私が賢治をこんなにも苦しくさせている。


そう、痛い程に感じる。



また元に戻りたいなんて。


また普通に話がしたいだなんて。


私、馬鹿だ……。



「邪魔して悪かった」


そうポツリと言い残し、賢治は再び歩き出した。


私は無言でその姿を追いかける。



どんな言葉をかければいいのかわからない。


ただ切なくて苦しくて……口を開けば謝罪の言葉しか出ないと思った。



濡れた革靴に足を通した賢治が、不意に振り返る。


その目は酷く傷付いた色を湛えていた。
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