ランデヴー II
その場に残されたのは、沈黙と、そして恐ろしい程に張り詰めた空気。



私は凍り付いたようにその場から動けなかった。


倉橋君は既に動く気配のない扉に目を向けたままだ。



だがそんな沈黙を破ったのは、倉橋君の「どういうことですか?」という言葉。



「どうして守山さんがここにいたんですか?」


そう言って扉から目を離し、私のことを見る。


その顔は穏やかなようでいて、でも瞳には確かに不快感を滲ませている。


責めるような言い方に、私はぐっと押し黙るしかない。



「答えられないようなこと、してたんですか?」


「違う、そんなこと――」


「じゃぁどうして何も言わないの?」


カタンと手にしていた傘をその場に放り、靴を脱いだ倉橋君がつかつかと近付いて来る。



――怖い。


一瞬そう感じてしまう程に、妙な迫力だった。
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