ランデヴー II
「ねぇ、ちゃんとこっち見てよ」


グッと腰を引き寄せられ、後頭部を持ち上げられる。


無理矢理仰ぎ見るようにされた私を見下ろすその目は、冷たく濡れたような光を放っていた。



悪いことは、していない……多分。


でも……抱き締められてしまったから。


だから、胸を張ってそう言えないのだ。



倉橋君の冷たいその目と対峙し、私は半ばパニックに陥っていた。



「何でもないの、本当に。ただ……」


「ただ?」


「……忘れ物を届けてくれただけだから。雨で濡れてたし、放っておく訳にもいかなくて――」


「俺が来るのに?」


そう問われ、私は黙り込んだ。



「俺が来るってわかってて、上げたの?」


「倉橋く――」


「俺をコンビニに行かせて、何するつもりだったの?」


「…………」
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