ランデヴー II
怒ってる、完全に。


何をどう言えばわかってもらるのだろう。


でも背中が濡れている以上、何を言っても疑惑が晴れることはないような気がした。


さっきから倉橋君は私の体を支えるようにしながら、その手で濡れた背中を撫でている。



確かなのは、私は今責められているということ。


でもあの場面で賢治を追い返すことは、やっぱりどう考えても私にはできなかったと思う。


きっとこの気持ちは、倉橋君には理解してもらえないだろう。



「ごめんなさい……」


「何が?」


「…………」


とりあえず謝ってみるも、一蹴された。



私自身特にやましい気持ちがないのにここまで怒られると、何だか悲しくなってくる。


倉橋君は、私のことを信じてくれてないのだろうか……。



しゅんと視線を落とす私を見て、倉橋君はこれ見よがしに深い深い溜息を吐いた。
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