ランデヴー II
「ビールとかのがいい?」


「うぅん、お茶がいい。有り難う」


素直にお礼を言って、それをゴクリと飲み込む。


冷たいお茶は、お酒で乾いた喉を潤してくれた。



モリケンはその場に立ったまま、私に注いだお茶の残りをペットボトルから直接口に入れている。



「何か簡単なの作ろうか?」


「いや、うち何もないから」


「え、何も?」


「あぁ、酒だったらあるんだけどな」


コートを着たままのモリケンはそう言ってニヤリとすると、「煙草吸ってくる」と言い残してベランダへと出て行った。


寒いのに、どうやら煙草は外で吸うようにしているらしい。


確かに室内は、煙草の匂いはしない。



ソファーの前に座り込んで大人しくお茶を飲みながら待つも、何だか退屈になってくる。


私は脱いだばかりのコートを再び羽織ると、カーテンが開けられたままのガラス扉に近付いた。


ベランダへと続くそこには部屋の明かりが反射し、目を懲らすとモリケンの広くて逞しい背中が見える。
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