ランデヴー II
ガラス扉をガラガラと開けると、外から冷気が飛び込んできた。


気にせず外へ出ようとして足元を見ると、女性物のサンダルが無造作に置いてあることに気付く。


音に反応して振り返ったモリケンが、ハッとした顔をして私を見ていた。



「あ、それ……。ごめん、前の彼女の」


「うん、そうかなって思った」



モリケンには1年くらい前まで彼女がいた。


ちょうどクリスマスが近付いてきた頃に別れたことで、佐原さんにいじられていたのを思い出す。


それについてモリケンが自らベラベラと語ることはなかったが、どうやら学生時代に仲良くしていた女性だったらしいということは、みっちーがしつこく聞き出したから知っていた。



「ベランダにあると、つい捨てるの忘れんだよな……すぐ片付けるから」


そう言いながらモリケンが手を伸ばす前に、私はそれを履いた。


今はそれしか履くものがなかったし、わざわざ玄関まで靴を取りに行くのが面倒だったからだ。



「後でいいよ」


1年も前の彼女のことを気にする程、私も子供ではない。


今は便利だから使ってしまおう、ただそう思った。


少し困ったような顔をしたモリケンの隣に並ぶと、「気にしないで」と笑って見せる。
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