ランデヴー II
「やだー、坂下さん可愛いんだけど!」


「て言うか早いですよ、まだまだこれからなのにー」


2人にそう茶化されながら、「やー、もうお酒やめとこうかな……」ともごもごと濁した時だった。



「お! お前遅いじゃないかよ、待ってたんだぞ!」


と、突然佐原さんの大声がその場に響いた。



「だから、仕事が残ってるからあまり期待しないで下さいって言ったじゃないですか……」


そう佐原さんに答えるその声はものすごく聞き覚えのある声で、一瞬ふわりと懐かしい気持ちが心の奥を掠めた。


それと同時に、私の胸は壊れるんじゃないかと思う程にドクドクと脈打つ。



「お前の席そこ、坂下の隣な」


そう言われ、私はビクッと体を固まらせて息を呑んだ。



隣――彼の席、だったんだ……。



動揺を抑えきれない私は、気付くとテーブルに残っていた焼酎のロックを一気に口の中に流し込んでいた。


喉の奥が焼け付くようにカッとなり、色んな意味で頭がくらくらする。
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