ランデヴー II
そんな私を支えるのは、やはり倉橋君で。



「ちょっと……大丈夫ですか?」


心配そうに後ろから腕を掴んで、私の体を受け止める。


さっきまで反対側を向いて話をしていたはずなのに、どうしてこんな私に気付くの……構わないで欲しいのに。



この距離が辛い、その温もりが凶器だ。


早鐘のように鳴る胸を押さえ、「ごめん、大丈夫だから」とその腕をやんわりと押し戻した。



「付き添いますよ?」


「大丈夫、大丈夫」


そう言って3歩進んだ私は、今度は壁に思い切り足をぶつける。



「いった……!」


そう叫んでうずくまる私の背後から、「もー」と言いながら近付いてくる倉橋君の気配がした。


しこたま打ち付けた足の指をギュッと押さえながら、私は心の中で「来ないで」と叫ぶ。
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