ランデヴー II
触れないで欲しい、私に。


気持ちが溢れてしまうから……どうしようもない程に。



――だが。


そんな私の腕を取ったのは、倉橋君ではなかった。



「おい、大丈夫かよ? 飲み過ぎだろ……ほら、掴まれ」


その呆れたような声に、心の底からホッとしている自分がいる。



「賢治……ごめん。肩貸して」


「しょうがねぇな」


私は素直に賢治の肩に掴まると、お店のスリッパを履いてトイレまで付き添ってもらった。


後ろを振り返ることは、できないままに……。
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