ランデヴー II





トイレの個室に入ると、「ふぅ……」と深い溜息を吐く。


まさか、こんな所で再び会うことになるなんて……。



同じ会社だから、全く会わないという訳にはいかない。


だが倉橋君が今いるマーケティング部と私の課は、ほとんど関わりがなかった。


社内でも稀に見かけるくらいで、接点がないのだ。


擦れ違ったら挨拶くらいはするが、もう雑談などは一切ない。



だから……忘れられると思った。


考えないようにしていれば、きっと何の感情もなくなると思った。



でも、ただ隣に座っただけ。


少し体が触れただけ。


たったそれだけで、こんなにも心を激しく揺さぶられるなんて……。
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