ランデヴー II
私は自分が怖かった。


こんなに激しい感情がまだ隠れていたことに、信じられない思いだった。



もう、終わったと思っていたのに。



外では賢治が私を待ってくれている。


私は目を閉じて再び深く呼吸を繰り返すと、トイレを出た。


そしてまだ少しフラつく足で、とろとろと歩く。



「賢治、ごめん。有り難う」


そう謝る私に、賢治は意地悪そうな笑みを向けた。



「お前、今日はもう酒終わりな」


「うん、さっきウーロン茶頼んだから……。あの2人お酒強いよね、つい引き摺られちゃった」


「マジか。阿部さんが酒豪なのは知ってたけど、川口さんまでそうだとはな……」


雑談を交わしてのんびりとお座敷まで戻りながら、私は意識的に賢治の腕に自分の腕を絡ませていた。


酔っている、ということもある。



だが、自分に認識させる為。


私は今この人と付き合っているのだ、と。
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