ランデヴー II
大丈夫、普通でいられる。


平常心、平常心。



そう思いながらも、ドキドキしながら自分の席を見ると……。


既にそこに私の席はなかった。



「いやぁ、こうやって飲むのも久しぶりだなぁ。たまには付き合えよー、俺はいつでも空いてるぞー」


「そうですね、じゃぁ今度是非」


そこにはいつもと違わず出来上がった佐原さんが、水を得た魚のように倉橋君に絡んでいた。


今日ばかりはそんな佐原さんに感謝したくなる。



「賢治の隣、行こうかな。佐原さんの席だよね?」


「あぁ、そうしろよ」


苦笑いしながらも内心ホッとして、私は奥の席に座ることにした。


正直倉橋君の隣に座る気分ではないし、話したいこともない。



私達は座敷に上がるとみんなから怪しまれないように、さりげなく距離を置いた。


でも賢治の後ろを追いかけながら、私はふとある1つの視線がこちらに向けられていることに気付いた。
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