ランデヴー II
「阿部さん、これからも頑張ってねー」
「元気でね」
みんな口々に別れを惜しみながら、歓送迎会兼忘年会はお開きになった。
佐原さん率いる2次会組は、楽しそうに夜の街へと消えて行く。
その後ろ姿を見送って、私は賢治と一緒に帰る所だった。
「坂下さん」
背後から、倉橋君にそう呼び止められる。
振り返ると、ダッフルコートに身を包んだ倉橋君がいた。
あぁ、良く似合うなぁ……つい見とれてしまう程に。
穏やかなその表情は、何を考えているのかさっぱりわからない。
「飲み過ぎてたみたいですけど、大丈夫ですか?」
「うん、もう大丈夫。有り難う」
何も感じてないフリで、サラリと答えた。
意識的に笑顔を浮かべる自分が、辛い。