ランデヴー II
違う……私達はそんな関係ではなかったし、あれはもう2年半も前の話だと思うと何だか信じられない気持ちになる。



「古い話だけどな。そう言えば俺、他にお前の浮いた話とか今まで聞いたことねぇなぁ……」


私が否定する前に、賢治がぽつりと独り言のように呟いた。


その言葉に、鼓動が胸を打ち付ける。



確かに私は以前付き合っていた人の話などを人に話さない。


いや、話さないと言うよりは話せないと言った方が正しいのか。


みっちーにも他の同期にも……佐和子以外には、あけすけに自分の恋愛の話をしたことがなかった。



友人に聞かれれば付き合っていた人がいたことくらいは話すが、さすがに不倫していたことはそうおおっぴらにできることではない。


それに、全て自分の胸の内に秘めておきたいという勝手な思いもあった。



「まぁ……いっか。行こう、送る」


「え、いいよ。そんなことしたら、賢治が家に帰るの遅くなっちゃう」


「いいんだよ、俺がそうしたいんだから。酔っ払ってんのに1人で帰せないだろ」


賢治はそう言って小さく肩を竦めると、「ほら」と私に手を差し出す。
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