ランデヴー II
家に帰ると座ってしまわないうちにと、バスルームに直行してお湯を張った。
ちゃんとお湯に浸からないと、何だか1日が終わったような気がしない。
賢治はわざわざ家の前まで送ってくれた。
少し寄って行くかと尋ねる私に「少しじゃ済まなくなりそうだから」と名残惜しそうな言葉と短いキスを残し、来た道を引き返して行った。
明日は朝一で他社を交えたミーティングがある。
私は申し訳なく思いながら、その背中を見送ったものだ。
部屋に行くと帰りにコンビニで買った牛乳や納豆を冷蔵庫にしまい、最後にペットボトルの水を取り出してゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ。
そのままキッチンに寄りかかって、ふぅと溜息を吐く。
お酒を飲んだ後だから、ベッドなんかに横になってしまうとすぐに今日が終わってしまいそうだ。
ここは、以前私が住んでいたマンションではない。
更新を機にあのマンションを引き払い、今は別のマンションに移っていた。
あの場所には、思い出があり過ぎる。
気持ちを切り替える為にも、環境を変えたかった。