ランデヴー II
モニターに近付いて教えを請う倉橋君と少し体が触れただけで、全身が心臓になったかのように震えた。


仕事なのに彼の顔を見ることができなくて、それでも目が合うとドキドキが止まらない。


挙げ句の果てに、少しプライベートな話をされるだけで心がウキウキと弾む始末。


それはつまり、もっと彼のことが知りたいという衝動だった。



好きだと認めてしまえば、後はもうどんどんはまっていくだけだ。


それはまるで底なし沼のようで、ズルズルと際限なく私を呑み込んだ。



今までは何の感情もなくできていたことが、全ての行動に「好き」という気持ちが付きまとう。


そんな日々は私を疲れさせもしたが、同時に楽しくもあった。


再び会社が楽しいと思えるようになったことが、また男の人にそういう感情を持てるようになったことが、嬉しかった。



倉橋君への気持ちに気付くと、陽介に抱いていたわだかまりのようなものも、おかしいくらいになくなっていった。


仕事で話しても、その他大勢の人と接する時と変わらない程に落ち着いて接することができる。


それどころか、付き合っていた頃のことを沢山の疑問符と共に振り返られるようになっていたのだ。


今では何故あの恋にあんなにも夢中になっていたのか、わからないくらいだ。
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