ランデヴー II
そうして倉橋君への気持ちが胸一杯に広がり、今にもはち切れそうになった頃。


私はその気持ちを抱えることが辛くなり、想いを告げようと決心した。


気付かれないようにと心をひた隠しにしてポーカーフェイスを気取っていた自分に別れを告げ、素直になりたかった。



半年もの月日が流れてやっと気付いたこの気持ちを告白して、また最初から始められたら……。


そう思ったのだが。



予兆は――確かにあった。



倉橋君と前田さんが付き合っているという噂は、チラホラと聞こえていた。


だが、そうかと思うと今度は間違いだという噂がまた聞こえてくる。


『本人が否定してた』とか『前田さん可愛いしね』とか。
とても不確かな情報だけがふわふわと流れる。


まさか倉橋君に直接聞くこともできず、隣に座っているのにそれを確かめることさえできないままに、私は噂話に翻弄されていた。



でも今までの経験上、噂が本当だったことは少ない。


2人の関係はいつもと変わらないように見えたし、それに……。


以前目撃した告白現場での前田さんに対する倉橋君の態度を思い出すと、どう考えても有り得ないような気がしていたのだ。
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