ランデヴー II
それは私を気遣ってのことで、ひいては自分の心を律する為にわざとしていることだと思っていた。


今思うとあまりにも自分に都合のいい解釈に、滑稽過ぎて笑いすら込み上げる。


もしかしたらその頃から既に前田さんと付き合っていたのかもしれないのに。


倉橋君は佐原さんの質問をことごとく避けてあまり彼女との話はしなかったので、本当の所は定かではないが。



私は最初に自分自身が思っていたことを、もう1度考える。


そう、そもそも倉橋君ほどの人が私を選ぶということが、有り得ないことだったのだと。


不倫はするし、意地っ張りだし、挙げ句の果てに散々助けてもらったのに最終的にフッた女だ。


もう関わりたくないと思うのが、普通だ。


そして何よりもずっと倉橋君に別の誰かが現れるように願っていたのは、私自身だった。


私のことは諦めて、別の人を好きになって欲しいと願っていた。



それなのにそんなことはすっかり忘れて自分だけその気になって浮かれ、告白までしようとしていたなんて。



「馬鹿馬鹿しい……ほんと、馬鹿……っ」


思い返しながら呟き、残っていた水をあおるようにして飲み干す。
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