ランデヴー II
『これ明日のミーティングで使いたいから、パワポでまとめてメールで頂戴』


ぽいっと何でもないように渡されたその数枚のA4用紙には、落書きのようなものがびっしりと書かれていた。


恐らく、打ち合わせをしながら自らが作ったフローの下書きだろう。


一瞬自分でやれよ……と思ってしまう程に、面倒な作業だ。



本当に不本意だが、榊原さんはこういう自分でやるには面倒な仕事を、絶対と言っていい程に私に頼んできた。


この課の下っ端組には、私だけじゃなく今村さんもいるというのに。



だが彼は恐らく……今村さんに遠慮があるのだと思う。


榊原さんは少し厳しい所があるし、他部署の人には容赦なく怒鳴りつけたりもする。


味方に付けると色々と目をかけて庇ってくれたりもするが、敵に回すと本当にやりづらい人だ。



今村さんは、そんな榊原さんに若干ビクビクしている感があった。


そういう所が彼に受け入れられない要因であり、そして絡みづらくもあるのだろう。


榊原さんももう少し今村さんに歩み寄ってくれればいいのに……。



だがどっちにしろ榊原さんからの仕事が全て私に集中していることは事実であり、断ることができなければ放棄することもできない。


とりあえず自分の仕事を後回しにして心の中でダラダラと文句を言いながらも、黙々とこなすしかないのだ。
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