ランデヴー II
そんな時に今村さんからぶしつけな視線を向けられた私は、カチカチとマウスを操りながら少し苛立っていた。



深い溜息を吐いて手を休め、何気なく画面を切り替えると、賢治からメールが来ていることに気付く。


それは、明日のクリスマスイヴについてだった。



今年のイヴは平日の為、2人でクリスマスディナーを楽しむ予定だ。


いつか恋人と行くことができたら……雑誌で特集される度にそう夢見ていたホテルのディナーを、賢治が予約してくれたのだ。



指折り数えてみれば、私が恋人とクリスマスを共に過ごすのは学生の頃以来だ。


そんなにも長い間シングルクリスマスを過ごしてきたのかと思うと、一瞬愕然とする。


だから社会人になって初めて恋人同士で過ごせるこの日を思うと、否応なしに心が弾む自分がいた。



だがそのメールは、明日はミーティングで定時に出られないかもしれないけど、必ず間に合うようにするから少し待っていて欲しいという内容だった。


それを読み、クスリと笑みがこぼれる。


こうして事前にきちんと連絡をくれる所が、賢治らしい。



さっきまでのイライラなどすっかり忘れた私は簡単に返信をすると、ウキウキと弾んだ気持ちで席を立った。


そして少し仕事から離れたくて、トイレへと向かう。
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