ランデヴー II
例え機嫌が悪くてもなるべく態度には出さないようにしているつもりだが、さっきはそれが出ていたのだろう。


彼女のように内気な人にとって、他人の機嫌は何よりも気になるものだと思う。


私だって、機嫌の悪い人とは話したくないし関わりたくもない。


それは誰だって同じだ。



次からは気を付けようと深く反省していると、今村さんがこんな所でまでチラチラと視線を向けてきているのに気付いた。


そうだ、私にとってこの視線も不愉快になる元だった……。



いい加減やめてもらおうと、持っていたコンパクトをパタリと閉じて口を開きかけたその時。


それよりも早く、私の耳に小さな声が届いた。



「あの……」


見ると今村さんがその目を若干泳がせながらも、私のことを見ていた。



彼女が話しかけてくるなんて、非常に珍しいことだ。


こちらから何となく雑談を振ればそれなりに返ってはくるが、彼女から話を振られることはそうそうない。



驚いた私は「何?」と首を傾げ、じっと今村さんを見つめた。
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