ランデヴー II
彼女が社内で誰かとタメ口で話している所は、見たことがない。


同期の人と話している所も……。



会社は仕事をする場所だということが大前提ではあるが、それ以外にも人と人が出会って関わっていく場所でもあると、私は思っている。


幸いこの会社はかなり自由が認められているのだから、もっとリラックスして過ごせるはずなのだ。



いつまでも気を張ってただキリキリと仕事をしているだけでは、いつか嫌になってしまうのではないか。


私は今村さんを見ながら常々そう思っていた。


せめて私の前だけでも、もっと砕けてはくれないだろうか、と。



「じゃぁ、もう敬語はナシってことで。ね?」


「はい……。あ、う、うん……」


そう言って少しはにかんだような今村さんの笑顔は、今まで見た中で1番可愛らしく柔らかい表情だった。
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