お仕置きゲーム。


「...んなこと、とっくにわかってるよ。」

俺が冷たい視線を向けると、オンナは表情を歪めた。


「取り調べも今日で終わりよ。」
「そう。」

オンナは俺の頭を撫でる。


「最後に、聞いていいかしら。」「なに。」「あなたのお母さん、どんな人だったの?」

突然聞いてきたオンナを見上げて、少し考えてから口を開いた。


「料理は下手だけど、俺のことをよく見てくれて、愛してくれた。優しい人だった。」

「お母さんのこと、好き?」

「...好きだよ。」

「そう。...今だけ特別よ。私の事をお母さんだと思って、甘えていいわ。」

「...は?」

確かに顔は似てるけど、そんなの無理だ。俺が無理だと言う前に、オンナは俺を抱きしめた。吃驚して目を見開くと、耳元に口を近づけられる。


「取調室には監視カメラが2台あるのよ。」

俺にしか聞こえない声音でそう呟かれ、俺は表情を変えずに耳を傾ける。

「貴方は判決が出る前に殺されるわ。そうならないように逃げなさい。警察は信用できないの。上からの命令だから私にはどうすることもできない、ごめんなさいね。」

少し目を見開いた。俺はオンナにあわせて、腕をオンナの背中にまわししがみつくように抱きしめかえす。監視カメラから部屋の様子をのぞいている奴らには俺が母さんににたオンナに甘えているようにしか見えないはずだ。


「本当に償いたいのなら生きなさい。今日の夜、見張りが薄手になる時間帯に逃がしてあげるわ。」


それだけいうとオンナは俺から離れた。どうして殺されるのか、このオンナが俺を逃がしてくれるのか、詳しいことは全くわからないが今は何も言わないほうがいいだろう。


俺は目の前にいるオンナを見つめた。
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