お仕置きゲーム。


「佐藤君?」

「っ、」

涙をためて震えている俺を見たオンナは俺に歩み寄り、目線をあわせるようにしゃがみこんだ。

___真咲、私を信じて。

頬を涙が伝う。オンナは一瞬動きを止めたが、手をのばし俺の頬にふれると親指で涙を拭った。

「怖いのね。」

「こわ、い。」

「あんなに強がったって、あなたは子供だもの。当然だわ。」

きっとオンナは、殺されることに恐怖を抱いていると思っている。けど、違う。俺は、また、殺すことが怖いんだ。

「大丈夫。助けてあげるから安心しなさい。」

オンナははじめて、俺にむけて優しい表情を見せた。母さんそっくりな顔に胸がしめつけられる。

「っ、かあさん。」

「...大丈夫よ真咲。」

俺はオンナに抱き着いた。肩に顔をうずくめ、声を殺して泣く。オンナはとんとん、と背中をリズム良くたたいてくれる。

「ふ、ひっく、」

「泣きたいときはなきなさい。我慢しなくいていいの。まだ子供なんだからおもいっきり甘えればいいの。」

錯覚がおきる。オンナの声が、母さんのものと重なる。

「かあ、さん。」

「なあに?」

「ころしたく、な、い。」

自然にもれだす弱音を止めることができなかった。

「つぐない、た、いのに。」

きゅ、と俺を抱きしめる腕に力がこもる。



「ッ、つぐなッ、て、また、啓太と一緒に、いたい、のに。」



「安心しなさい。私が、助けてあげるわ。」

だからもう泣かなくていいの。

辛いのも、痛いのも、苦しいのも、感じなくていいのよ。

オンナは同じことを繰り返しいうと、震えた声で「祐樹、」と呟いた。
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