お仕置きゲーム。
逃走ヒーローと逃走少年
_____________________
_____________
_____
「行くわよ。」
母さんに似ているこの人は暗闇の中で静かに告げた。頷くかわりに、差し出された手をとる。監視の目を盗み、部屋の外にでるとなるべく足音をたてないようにして走り出した。
俺は未だに悩んでいた。この人を巻き込んで、自分は逃げてもいいのだろうか。もし、この人が俺を逃がしたということがバレれば大変なことになるだろう。最悪、この人まで殺されてしまうのではないかという不安が過る。
しっかりとした足取りで走るオンナを見上げ、俺は目を細めた。
(俺のせいで、この人まで巻き込むわけにはいかない。)
裏口からこっそりと外へでると、オンナは手を離して微笑んだ。
「バレないうちに行きましょう。さ、あそこの車に乗って。」
「…なあ。」「?」「俺、やっぱり戻るよ」「え?」
理解できない、という表情を見せるオンナに無理やり口元をつりあげて笑ってみせた。
「俺、生きるのめんどくさくなった。もう飽きたし、いいや。ちょうど殺してくれンだろ?だったら好都合。生きていたって、」
そこまでいった直後、ぱぁん!と頬に衝撃が走った。叩かれたのだと理解するまでに数秒かかる。俺は動揺を見せずに冷めた目つきでオンナを睨んだ。
「それ、本気で言っているの?」
「本気だけど。」