お仕置きゲーム。


「やっぱり、真咲は優しいね。」

えへへ、と智香は笑う。俺が、優しい?馬鹿だろこいつ。俺は優しいんじゃない、真咲の為に優しくしてやってるんだ。勘違いしているアホを冷めた目でみると、智香は突然「別れる!」とか言い出した。どうやらこいつもイカれているらしい。

(どうして?だって智香、あんなに彼氏さんと仲良しだったのに)

「なンで?」

「だって私、ずっと前から真咲が好きだったんだもの。真咲と付き合う為に、色んなオトコと付き合って自分を磨いてたの!昔より、ずっとずっと、綺麗になったでしょ?」

にっこり。親友に向ける笑顔とはまるで違う、照れたような、欲情したような瞳で俺をみる。真咲はどう反応していいのかわからないらしい。呆然と智香を見ている。

「真咲、私、ずっとあなたを待ってたの。私、真咲の強気なところや不器用で優しいところ、大好きなの。もちろん、あなたの可愛い顔も好きだけど。」


ねえ、付き合って。真咲。


(…や、だ)「…」(やだよ…だってマサキは、私のだもん。)「…」(ずっと、友達だと思ってたのに、酷いよ智香。)「…真咲。」

(マサキが、とられちゃう。マサキが消えちゃう。マサキ、やだよ、好き、大好き、あたし、がやらなきゃ。私が、おしおき、しなきゃ、悪いこにはお仕置きしなきゃ。)

「…俺は真咲しか愛せない。」
「私はあなたしか愛したくない!もう、嫌なのよ!ずっと、友達のふりして真咲の隣にいるの、辛いのよ!」


「知るかよ。」

真咲は誰にもやらない。真咲を悲しませない、苦しませない。真咲が望むなら、こいつを壊す。「…それでいいんだろ、真咲。」

返事は無かった。

「お仕置きが終わったら、次はテメェの番だ。」

それまで、俺と一緒に入院してよ?


取り出したのは、父親を殴った時に使用した鉄の棒。何人もの血液が染み付いているそれで、智香を殴った。
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