お仕置きゲーム。


「真咲、お仕置きの時間だ。」

何時ものようにお父さんは言った。「うん。」何時ものように返事をして、私は押入れに入る。数分すると、また女の人の悲鳴が響いた。胸の奥がざわざわして、頭がぼうっとしてくる。「あ、アァ、イタイ、助けて!いやぁっ!」何時もの悲鳴。大丈夫、大丈夫だよ。マサキがいるもん。マサキが護ってくれる。

ぎゅっと目を綴じ、マサキは大丈夫。だと自身に言い聞かせる。すると意識が遠のくような感覚になり自分が自分じゃないようなふわふわした感覚が体を支配した。


「またかよ。」


ぽつり。暗い押入れの中で低い声が響いた。(マサキだ!)不思議な事に、マサキが現れるときは私は声が出せないし動けない。「テメェの父親は相当イってるよな。」(イってる?)「イカレてるってこと。」はは、とマサキは笑った。

否定できないために(そうかも)と言えばマサキは突然「俺が全部ブチ壊してやろーか?」と言い出した。いつも、必ずこういうのだ。そのたびに私は(駄目だよ)と言う。「なんで。」(マサキに会えなくなるのが嫌なの)「ふうん。」毎日同じことを言いあう。いつもなら、そこで違う話題にうつるはずだった。しかし、今日のマサキは違った。

「...。」

急に無言になる。不安になった私は(マサキ?)と声をかけた。彼は突然押入れを蹴り飛ばす。派手な音をたてて押入れの扉は吹っ飛ぶ。

(マサキ!駄目だよ!なんで出るの!)

「見ろ、真咲。」

(え?)

「押入れから出ても、俺はここに居る。」

(あ。)

な?とマサキは口元を緩めた。


「真咲!!お前どういうつもりだ。お仕置きの最中は出るなとあれほど言ってきただろう。なんだ?俺の言う事が聞けなくなったのか?あ?」

目の前には全身に酷い痣をつくり倒れている知らない女性の姿がある。それを冷めた目でみたマサキは「きたねぇな。」と呟く。(マサキ!押入れに戻って。だめだよ!)

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