お仕置きゲーム。



「なん、だよ、それ。真咲、本当お前どうしたんだよ。」お前らしくないぞ!とマサキを揺す振る。「俺ラシイってなんだよ。ラシイって、それはテメェの勝手なイメージだろ?押し付けんなよ。」「真咲、しっかりしろ!」「ああ、そうか。お前も真咲を傷つけるのか。お仕置き、だな。」


マサキは強い力で啓太を突き飛ばした。啓太は壁に体をうちつける。「ッ、」侑里乃ちゃんは助けを呼ぼうと口を開くが、首をしめられたせいで声がでないらしい。おまけに足も震えていて立てない。マサキは好都合だといって笑った。


マサキは、クローゼットに隠しておいた包丁を取り出す。いろんな人の血がこびりついているそれは少し錆びていた。(マサキ、ごめんね。いつも、あなたに助けられて、私、役立たずで。)「何いってンだよ。俺が勝手にしてるだけ、真咲は何もわるくねーよ。」


ひた、ひた。

よろけながら、マサキは不気味に啓太に近づいていく。「っ、」途中、侑里乃ちゃんがマサキの足を掴んだ。「や、っ、」「侑里乃!逃げろ!」「ッ、」侑里乃ちゃんは離れようとしない。冷たい目でそれを見ると、マサキは侑里乃ちゃんを遠慮なく蹴り飛ばした。「テメェは後だ。」



侑里乃ちゃんはそのまま倒れた。気絶する寸前、侑里乃ちゃんはぽつりとかすれた声で呟いた。


「そのおんなのひと、まさきちゃんのおかあさんだよ。」


「ッ!?」

マサキは大きく目を見開いた。(おかあ、さん?)手から包丁がすべりおちる。「ッ、」しかしすぐに我にかえったマサキは包丁を拾おうとする。しかしそれより先に啓太がマサキを抱きしめた。


「ッ、真咲に、触れるな、」「...。」「離れろ!啓太!離れろよ!俺の真咲の体に触れるな!!」「...。」「啓太!!」「お前が俺の名前を呼ぶ声、小さいころと何も変わってねーな。」「ッ、離れろ、離れろ!」必死でもがくが、啓太はマサキを離そうとしない。マサキが壊れちゃう、離れて。早く離れて。そう願うが、無駄だった。


「俺、言っただろ!施設の仲間を護るって!」「離せ!」「お前も仲間なんだよ!たとえお前が普段の真咲とは違う、別の真咲だとしても、仲間ってことにはかわりねーんだよ!もう俺は失いたくない!」「キレイゴトばっかいってんじゃねェ!!壊す、壊してや、」

ギュウ、体が壊れるんじゃないかというほど抱きしめる腕に力がこもった。ナカにいる私も少し苦しかった。「ん、ッ、」そして唇を塞がれる。声がだせない。苦しい、嫌だ。マサキ。「ん、ッ、ふ、」どうにかして離れようともがくが無駄だった。どうして。

「ハッ、」

息ができない、しぬ、と思った瞬間やっと解放される。その瞬間、マサキは啓太の肩に噛みついた。
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