お仕置きゲーム。
はじめは悲鳴をあげ、おれに助けを求めていた美紀はなにも言わなくなった。美紀の目から光が消えている。キリキリと心が痛んだ。
目の前で繰り広げられている光景がなんなのか理解できない。ただ、どうしようもなく怖かった。気持ち悪い。吐き気がこみ上げてくる。喉の奥に何かがつっかえているような感覚が襲う。
おじさんは美紀に白いなにかをぶちまけると荒い呼吸をしながら俺を恍惚とした表情で見た。「ハァ、ハァ、…やっぱり子どもは綺麗で、可愛いなあ。」
ぞくり。背筋が凍る。全身が可笑しいくらいにふるえ出す。おじさんはぐったりしている美紀を放置し、おれにあゆみよってきた。つぎは、おれのばんだ。
そう理解したとたん、頭から美紀のことが消えた。自分のことでいっぱいになる。「っや、だ!くる、なっ…」俺の声は虚しく響いた。
おじさんは俺の縄をほどき投げた。そして俺の腕をつかみ、くびすじに舌をはわせたあとくちびるをくっつけてくる。こわい、こわいきもちわるい。じわり。涙が浮かぶ。
「ん、う、ぅ」怖くてくるしくて、されるがままになっている時、ぐったりしていた美紀がゆっくりと起き上がる、そして、そっとおじさんが投げた縄を拾うと近づいてきた。おれは大きく目を見開く。
そして美紀は、おじさんの首に縄をかけておもいきりしめた。
「っ、く!」
おじさんは俺から離れ、美紀を力まかせに殴り飛ばした。美紀は床に叩きつけられる。おれはその隙におじさんから距離をとった。
「今、首をしめた?だめだよ危ないことしちゃあ…だめだなあ、悪い子には、
お仕置きしなきゃ。」
おじさんは再び美紀に馬乗りになると、暴力をふるいはじめた。足がすくむ。お、おれ、助けなきゃ。美紀がぐちゃぐちゃになっていく。目の前で、こわれていく。こわい、こわい!
「…まさ、き、たすけ、よんで、」
美紀は掠れた声でつぶやいた。「っ、」「まさ、」ガッ!美紀の頬をおじさんが殴る。俺はぎゅっと拳を握りしめ、部屋の入り口に走った。震える手で鍵をあけ、飛び出す。うしろから聞こえる音が俺を焦らせる。