お仕置きゲーム。
母親が美紀を強く抱きしめた。声をあげて、泣く。俺はゆらゆらと美紀に歩み寄り、母親の腕の中でぴくりとも動かない美紀を見た。
目はうすく開いていて、光を宿していない。体中痣を作ったからだは痛々しい。「ごめッ、なさ、」無意識にでた言葉は謝罪だった。その場にぺたんと座り込み、俺は美紀を見て涙をこぼす。
「ごめんなさい、ごめんッ、おれの、せいだ。」
助けられなかった。理由をつけて、逃げた。間に合わなかった。
(それに、おれ、最低だ)
自分が殺されずに済んだと、心のどこかでほっとしてる。「どうしてッ、どうしてこんなことになったのよォ!」美紀の母親は俺にむかって、泣きながら怒鳴った。「ヒク、」喉の奥がぴくりとひくついて、言葉がでなくなる。
「どうして、なんで、ッ、美紀だけが、ッ...どうして、美紀を置いて、助けを呼びに来たのよ...。」
やり場のない怒りと悲しみが、静かに俺にぶつけられる。俺は否定できず、ただ涙を流しながら美紀の母親を見ていた。
「酷いわよ、こんなのッ...ああ、あぁぁああ!かえしてよォ!美紀を、返してよォオ!」
美紀は、しんだ。おれの、せいで。おれが、にげたから。みすてたから。おれ、美紀のこと、だいすきなのに。
_______「わたし、真咲がすきだから!」
笑顔で、嬉しそうに、そういった美紀が脳裏に浮かんだ。おれも、すきだよ。みき、すきだよ。みきと一緒にいるとね、どきどきして、きゅうってなって、苦しいけど、うれしいのに。今は、くるしいだけなんだ。辛いよ、なぁ、美紀。ごめん、ごめん。弱くてごめん、
「美紀を返して!かえしてぇえ!」
脳裏がふわふわして、ぼうっとしてきた。気づけば涙は止まっていた。
(俺、美紀を返さなきゃ。おれのこと好きって言ってくれた美紀を、今度は守らなきゃ駄目だ。)
静かに、目を綴じた。
(俺が悪いんだ。ぜんぶ。どうにかしなきゃ、どうにかして、みきを、)
「美紀、美紀!」
___ま、さき。
「...みき。」
___まさき、まさき。
脳裏に、美紀の声が響いた。