お仕置きゲーム。


真咲はそれから徐々に俺達と距離を置いていった。


一緒に帰らなくなり、学校ですれ違えば軽く話す程度になり、すれ違っても、視線があっても無視するようになった。最近、真咲は女らしくなっているような気がする。肩より上で揃えられていた黒髪は、今では肩より少ししたまで伸びている。違和感が俺を襲う。


納得いかない俺はある日、真咲を無理やり体育館裏に連れ出した。

何も言わずについてきてくれたことに、少しだけ安心する。


「...真咲、俺、お前になんかした!?」

単刀直入に問えば、真咲は表情を変えずにうすく口を開いた。「啓太、美紀の事好きだよな。」突然、死んだ友人の名前をだした真咲に何も言い返せず目を丸くさせる。

「俺、知ってた。」「ッ、急に、なんなんだよ。でも、それは過去のことだろ...美紀は、もういない。」「生きてるよ。」「真咲、お前ほんとにどうしたんだよ!」

ガシ、と真咲の両肩を掴み揺すぶると真咲は俯く。暫くして、真咲は顔をあげて俺を真っ直ぐ見つめた。目の前の真咲は、真咲じゃなかった。大きな目をまるく見開き、無表情ではなく、おんなみたいな柔らかい表情をしている。頬はすこしだけ色づいている。

俺は思わず真咲から離れて後ずさった。

「み、き。」

そう、美紀にそっくりだった。表情や雰囲気がそのものだった。美紀は死んだはずなのに、どうして。

「私は生きてるよ。」

声を聞き、俺ははっと顔をあげる。男にしては低くもなく、女にしては高くない、中性的な声は真咲のものだ。美紀じゃない。

「真咲!しっかりしろ!」「...啓太、死んだのはね、真咲なんだよ。」「な、にいって、」「真咲はね、私のために消えちゃったの。」「違う!お前は、美紀じゃないっ...真咲だ!」「どうしてそんなこというの?」「だって、美紀は、死んだッ、美紀が、いるわけ、ない。」


声が震えた。

「あ、そっか。私の体は死んじゃったもんね。」「ッ、」「なら、美紀じゃないね、この体は真咲のものだもん。だったら私は真咲だよね。でもね、心は美紀だよ?」「あ、ッ、」怖い、怖い。全身が目の前の人間を拒絶している。最低だ、俺。友達を否定してる。


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