お仕置きゲーム。


怯えている俺を見て、真咲は悲しそうな表情をみせたあと目を綴じる。次に開いたときにはいつもの真咲の表情に戻っていた。

「...啓太。」

静かに名前を呼ばれる。

「俺は、もう真咲じゃないんだ。」「ッ、なに、いって。」「マサキ。」「...え。」「俺はマサキ。真咲じゃない。真咲は美紀だ。」理解できず、俺はただ茫然として真咲、いや、マサキを見るしかない。

「俺は真咲を護る為にココにいる。真咲以外は何もいらない。」「まさき、おまえ、」「トモダチとか、カゾクとか、もうどうでもいいンだ。ゴメンナ、啓太。お前が知ってる真咲はモウ、いないンだ。」

棒読みで、マサキはそう言った。「な、んだよ、それ。」マサキは無表情で一筋の涙をこぼすと、何事もなかったかのように学校へ戻っていった。

「なんだよ、おれ、どうすれば、」

訳がわからない。真咲は美紀で、真咲はマサキ?何がどうなってるんだよ。あの事件から、真咲の様子が変だってことには気づいていたけど、まさかこんなことになるなんて。


俺はその場にぺたんと座り込み、涙を流した。悲しい?切ない?苦しい?いや、全部違う。今の俺にあう感情なんかない。ああ、なんだよ、コレ。




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その日を境に、俺と真咲は 他人 になった。智香は不思議そうな表情をしていたけど、深くは追及してこなかった。暫くすると、智香ともあまり話さなくなる。だんだんと、俺達の関係が壊れていった。



そして、俺を更に追い込むように家庭までもが崩壊していく。父親が仕事をクビにされ、酒に溺れるようになったのだ。

更に俺と母さんに暴力をふるう。それも毎日。次第に悪化していったけど、俺はそこまで辛いとは思わなかった。それは、美紀が死んだ事件が関係しているんだと思う。


美紀や真咲は、俺よりもっと苦しい思いをしていたに違いない。2人の痛みに比べれば、こんなもの、痛くもかゆくもないと思った。俺はMじゃないけど、暴力をふるわれることによって少しだけ気が晴れた。

美紀や真咲を、あのオジサンから護れなかった罪を償っているような気分になったからだ。俺はお仕置きされなければならない。なんて思い込み、日々を送っていた。
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