お仕置きゲーム。


しばらくその生活を続けていたある日、とうとう、耐え切れなくなった母さんが遺書も残さずに黙って自殺した。俺を残して、勝手に死んだ。母さんの葬式のとき、父さんは親戚の人たちに「啓太は俺が責任を持って育てます。」とぬかした。俺は大声で笑いたくなった。なにがそだてる、だ。



母さんが死んでから父さんの暴力は悪化した。骨折したときもあったけど、誰にも何も言わなかった。医者にいけば暴力がバレてしまう。そうなると、父さんはきっとつかまる。「誰かに言ったら殺すぞ。」それをおそれて、父さんは毎日そう言っていた。



しかし、夜な夜な聞こえる怒声や激しい物音を不思議に思った近所の人が、警察に通報したらしく俺が小学4年生になった時期に父さんは捕まった。ざまあみろと思ったけど俺は何も言わなかった。


親戚の人が近くに住んでいなかったために、俺は施設に預けられることになった。前よりはマシな生活ができるならどこでもいいや。


施設に入ると同時に転校。真咲や智香には一言も言わなかった。今更言ったところでどうにもならないし。

それでも、胸の奥が苦しかった。まえみたいな日々は、もう、送れるわけがない。だって俺は、真咲を見捨てたんだ。


今思えば、どうして体育館裏に真咲を呼び出したときに俺は優しい言葉をかけてやれなかったんだろう。壊れてしまった真咲を、全部受け止めてあげればよかった。


そうすれば、未来は変わっていたのかな、と今更後悔する。まあ、もう全部遅いんだけどな。


もう、会うことはないかもしれないけど、でも、いつか会えたら、その時は真咲を受け入れて、支えたいと思う。もし、もしかなうなら、いつかまた3人で会いたい。


俺が壊れないでいれたのは、過去の経験のおかげだ。真咲や、美紀のおかげなんだと思う。罪悪感は未だに拭えないけど。でも、俺が俺でいることができるのは、きっと、気付かないところで大勢の人に支えられていたから。

真咲や智香、母さん、友達、学校の先生がいたから、俺がいる。でも、真咲は違った。あいつは昔から強がりだから、誰にも頼ろうとしない。


全部1人で解決しようとする。


そう考えると、胸が苦しくなって、切なくなって、悲しくて、涙がぶわ、と溢れだした。「俺、...。」すっげー、後悔してる。傍にいたのに何もしてやれなかった自分が、憎い。罪悪感が更に募った。


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