お仕置きゲーム。

歪んだヒーロー(過去 マサキ視点)



*マサキ視点

小学2年生の夏休み、母さんが事故にあった。頭を強く打ったらしく意識不明の重体。俺は父さんに連れられて病院へ向かった。母さんは死んだように眠っていた。


「ッ、」

父さんは泣いた。医師は他人事のように、俺達に向かって口を開いた。「目を覚ます確率は極めて低い。奇跡的に目を覚ましても、後遺症がある可能性が高い...今までの生活はおくれないでしょう。」そう、告げた。


「かあさん。」

いつもは俺がそう呼べば、母さんは笑顔で頭を撫でてくれた。けど、もう、無理なんだ。俺は父さんの服をぎゅ、っと掴む。

「真咲、父さん、頑張るからな。」

父さんは俺の頭に大きな手を乗せて、がしがしと撫でてくれる。なんだか胸の奥がきゅう、と苦しくなって父さんの腰にしがみついた。






それからというもの、俺の日常は変わった。今なら母さんがどれだけ大きな存在だったのか痛いほど理解できる。父さんは今まで以上に仕事熱心になる。朝早くでかけて、夜遅くに帰ってくる。母さんの医療費や、俺の教育費、そして生活費を稼ぐために大変なのだろう。

詳しくはしらないけど、借金もあったらしい。両親は、俺が物心ついた頃から共働きで毎日忙しそうだった。


そういえば、母さんが作ったモノを食べた記憶がない。母さんが帰宅するのは夜中だし、父さんは料理が苦手だからいつもコンビニの弁当やスーパーの惣菜だった。


母さんが倒れる前は、父さんと2人で食べていた夕食は1人でとることになる。1人で食べる夕飯は全く味がなかった。


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