お仕置きゲーム。


俺は医務室を出て、部屋に向かった。廊下は暗かった。ふらつく足取りで歩きながらふと視線を窓の外に向ける。

星のない夜の空に、三日月が不気味に光っている。智香にお仕置きした夜に酷くにていた。不自然にも高鳴る鼓動をおさえつつ、俺は自室のドアを開けた。

隠しておいた、少し錆びた包丁を取り出し、強く握りしめる。


(啓太、いないね。)


部屋を見回したが、啓太の姿はなかった。どこかほっとしている自分がいる。

「…。」

(一度医務室に戻らない?マサキの様子を見にきてるかもしれないし。)

「あぁ。」

真咲に言われ、一度医務室に戻ろうとしたときだった。「…ふぁぁ。」欠伸をする声が響く。恐る恐る入り口に視線を向ければ、啓太が立っている。啓太は俺をみて目を大きく見開いたあと、嬉しそうに笑った。


「ここにいたのかよー。医務室にいなくて大丈夫なのか?」

「…啓太。」

「俺が便所行ってる間に医務室からいなくなってたから心配したんだぞ。」

「…ずっと、俺の隣にいたのかよ」

「あぁ。真咲、様子可笑しかったし心配だったから今日は真咲の隣にいようと思ってさ!」

大丈夫なら部屋で寝ようぜ、医務室は薬品臭いからあんまり好きじゃないし。と、啓太は言う。

啓太は俺を探してくれてたらしい。何故だか鼻の奥がツンとした。


(マサキ。)


真咲…美紀の声が響き、ごくりと喉をならした。今まで何度もお仕置きしてきたから慣れてるはずなのに、手が震える。

「…真咲?」

あきらかに動揺している俺をみた啓太は不思議そうな表情で俺をみた。


「…啓太。」

「…?」


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