お仕置きゲーム。
「...は?」
よくわからない。俺が首をかしげれば、侑里乃は再び「お父さん、偉い人だから。」と言う。
「真咲ちゃん、お父さんの知り合いに殺されちゃう。」
「ッそれ、どういう意味だよ!」
思わず声を張り上げてしまった。殺される?真咲が?
「判決がでるまえに、真咲ちゃん、事故で死んじゃったことになるんだって。」「...嘘だろ、」「おっきい会社の社長の、お父さんが言ってたから、ほんとうだよ。」
手先が震えた。信じられない。
「国のえらいひとに頼めば、すぐにお仕置きできるんだって。」
智香の父親が有名な会社の社長だってことは昔聞いたことがある。国のトップクラスの人間と知り合いでも可笑しくない。もし、もしこの話が本当なら、真咲が危ない。
「ッ、啓太、くん。」
侑里乃は、震えた声で俺の名前を呼んだ。
「ッ、もう、お仕置きは、ヤなの。」侑里乃は無表情のまま涙を流す。「こわいよ、怖い。やだッ、やだぁ。」「侑里乃!」
突然頭をかかえてその場にしゃがみこみ、泣き叫ぶ彼女を見て慌てて駆け寄った。「こわ、い。まさきちゃん、怖い!」「侑里乃、しっかりしろ!」どうやら、殺されかけた時の記憶がフラッシュバックしているらしい。
俺は侑里乃を強く抱きしめる。
「侑里乃、大丈夫だから。」
できるだけ優しい言葉をかけてやると、侑里乃は震えた手を俺の背中にまわしてくる。
「おねッ、ちゃんが、ダメって、ゆってるの。」
えぐ、ひっく、と嗚咽をあげながら言葉を続ける。
「啓太、くん、につたえてってッ、だから、わたしッ、」
うわぁああん!侑里乃は大声をあげて泣き出した。
「侑里乃、伝えてくれてありがとう。」
泣きそうになるのをこらえて、俺は侑里乃をさらに強く抱きしめた。