ヨットロマン物語
第一話:ヨットクルージング
横浜の真夏の夜空が赤、青、ピンク、むらさき等の花と勇壮な音で演出される横浜花火大会。
生け花を思わせるようなスターマイン。シュルシュルーとオレンジ色の光が夜空に上り、ドドーンとお腹に響く大音響と共に尺球が天空を一面真っ赤な花びらに染め次の瞬間、紫色に変わりピンク色となって空から海に降り注ぐ。
白い光の傘が低空から中空そして天空までの三段階を埋め、真っ暗なキャンバスに3段の白い光の滝が現れ、私達を一瞬夢の世界に誘い夏の夜の饗宴が夜空に消えた。
今21時。廻りのヨットやモータボートがエンジンを噴かして家路に急ぐ。我々のヨットはゆっくりと横浜港から千葉県南房総の富浦港に向かってロングクルージング(船旅のこと)に出発です。ヨットの話では地図を見ながら読むとよく解ります。
1.横浜から千葉富浦港
 横浜港から横須賀の観音崎灯台まで65馬力のエンジンで走ると約1時間です。ヨットはセール(帆)で風を切って走るのでは無いですか?と言う声が聞こえます。
ヨットの辛い点は、風がないと1センチも進む事が出来ない事です。そこで奥の手としてエンジンで走るのです。夜は比較的風が弱くヨットレースでない限りは、エンジンで走ります。ちなみにヨットレースでは、エンジンをかけると基本的には失格になります。
夜の東京湾は貨物船や砂利運搬船、小型タンカーなどが頻繁に走っていますので、昼間より神経を使います。夜の航海では、ワッチ(航海担当)を組んで航海します。ワッチの人数は、船の大きさや海の荒れ具合により変わりますが、我々の船では、静海状態で2~3人のチームを3グループ作り4時間でワッチを交代します。
東京湾の海から見る夜景は、倉庫や石油コンビナート、停泊船などのオレンジ色の保安灯だけが見え、余り美しくはありません。
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