恋路こいじ〜でんしゃで恋して♪〜< 短編集 >
目が覚めたのか?
ゴソゴソ動いている。
「 一桜里 おはよう! 」
「 おは… いやぁぁぁ。 」
ベッドから慌てて飛び起きた。
「 すいません…
私…
酔っぱらったんですね? 」
「 いいよ。別に。
まぁ、かわいかったし。
一桜里の家知らないし…
オレのマンションに連れてきちゃったけどね。 」
「 ホントにごめんなさい。
私、何か言ってましたか? 」
おびえるような目をしていた。
きっと記憶がないから不安なんだろう。
「 そうだね、
元カレを忘れられますか?と…
あったかいね、かんちゃん。
って言ってたよ。 」
一桜里の顔がみるみる赤くなっている。
「 一桜里が酔ってない時に
オレ、ちゃんと話を聞いてあげたいって思った。
今なら話せる?
かんちゃん。なんだろう元カレって? 」
「 荻窪さん、
心のキズって治りますか? 」
「 もちろん治るよ。
新しい恋をすれば、
簡単に治るよ。
すぐに治癒するさ。 」
「 新しい恋なんて
そんな簡単にできません! 」
ムキになっている顔もかわいい。
「 できるよ!
オレと新しい恋をしようよ。 」
「 えーっ!
何言っちゃってるんですか? 」
一桜里の顔は
茹で蛸みたいに真っ赤になり、
そのまま何も言えないでいる。
「 オレじゃ、ダメ? 」
首を横に振ってくれた。
「 ちゃんと心のキズ治癒してあげるからね。 」
一桜里の顔を見ながら
オレは、
あいつと終わらせる言葉を探していた。
end