恋路こいじ〜でんしゃで恋して♪〜< 短編集 >
「 ねぇ、
今、時間止められないかな? 」
「 そうだなぁ、
ずっとずっと奈琉世と一緒にいたいなぁ。 」
オレは窓の下を眺めながら相手の顔を見ずに伝えた。
「 ねぇ、轍くん。
ここ何回目だか覚えている? 」
「 もちろん!
初めてのデートはここ!
それから…
5回は来てるね。 」
オレは指折り数えて…
あっ!
やべっ!
1回は違うや!
どうしよう…。
「 轍くん、4回だよね。
4回なんだよね。
もう1回は私じゃない人ときてたんだよね。
…
知ってたんだ。
…
うん、ごめんね…
知ってて聞いた…
だから…
ウソでもいいから…
4回って言ってほしかったの。 」
怒ってもない
泣いてもない
笑ってもない
感情がまったくない表情でオレを見ていた。
オレの口から出た言葉は
「 ごめん。 」
それしか出てこない。
それ以外に浮かばない。
「 ごめんって言われても…
毎年同じ日に…
ここにきて…
私たち4回目!
4年目なんだよ。 」
そんなこと言われても
オレの口から出るのは
「 そうだよね…
ごめん…。 」
オレは奈琉世のとなりに座り手を握って
「 オレが一番好きなのは、
奈琉世だけなんだから…
信じてほしい。 」
オレはずっと奈琉世を見つめていた。
ただ見つめる
ただそれだけしか出来なかった。