恋路こいじ〜でんしゃで恋して♪〜< 短編集 >
「 奈琉世…
他の人に一瞬でも気持ちが動いたのは
ごめん…
でも気持ちが動いてわかったんだ。
オレの本当の気持ちが!
今日から
また…いや…ずっと
オレの奈琉世でいてほしい。 」
オレは
ずっと手をつないでいた。
離したら二度と繋げない気がしたから
でも冷たい風が
オレの手と奈琉世の手の間を通り抜けた。
「 轍くん、
私にも考える時間がほしい。
私にも轍くんが一番だって理解できる時間が…。 」
奈琉世は一人、
駅へと歩きだしていた。
オレは
鎖にでも繋がれているかというくらいに
身体が重くて
自分の力では動かせなくなっていた。
だから奈琉世の背中をずっと見ていた。
それだけしか出来なかった。
奈琉世が
いつ振り返って戻ってきてもいいように
オレは
オレなりに笑顔を作っていた。
でも
オレのところには
冷たい風がささやくだけだった。
end
2015/02/13