キスの相手はあなただけっ!!

「そんなに簡単に打てるもんじゃないよ?」

理子がつぶやいた。
わかってる。
それぐらい野球やってない私だって
わかってるよ。

「もし打てなかったらどうするの?」
「・・・。」
「マリア?!」
「考えてる。今はホームランを
打てることを願う事が先。」
「マリア・・・。」

ごめんね。理子。
こんなに冷たくして・・・。
今は願うしか出来ることはないの。
ピッチャーがボールを投げる。
聖夜は大きく空振り。
私はビクッと体が動いた。
どうしよう・・・。
頑張って!聖夜!
2球目。
ピッチャーが投げた。
これもまた空振り。
おしい。
とてもおしかった。
あともう少しで当たりそうだった。
まずはバットに当たらなくちゃ。
運命の3球目。
もしこれで打てなかったら
三振。
どうしよう・・・。
聖夜は汗をかいている。
緊張してるよね。
そうだよね。
だってこれで打てないと
聖夜のクラス負けちゃうし
私と付き合えないもん。

「聖夜ー!」
「え・・・?」

私は思わず叫んでしまった。

「ホームラン打たなきゃ私・・・私・・・。
違う人と付き合っちゃうから!!」
「はぁっ?!」

そりゃびっくりするわな・・・。
でもそうでもなきゃ・・・。
これくらい言わなきゃ・・・。
聖夜絶対あきらめちゃうもん。
聖夜はさっきより険しい顔をしていた。
そしてニヤッと笑って
バットをかまえた。
私の手には大量の汗。
見てるこっちも緊張するんだよ?!
ドキドキしながら見ていると
ピッチャーがボールを投げた。

「お願い!」

ギュッと目をつぶった。
力キーン
ボールを打つ音がした。
私はパッと目を開けた。
ボールは高く高く上がっていた。
テニスならスマッシュ打てるぐらい・・・。
高く上がっているボールの下には誰もいない。
走って追いかけてるけど
無理っぽい。
高く上がったボールが
校庭の端の木につっこんだ。

「や・・・。
やったー!」

私と理子は跳ねて喜んだ。
涙もこぼれていた。
聖夜もガッツポーズをした。
三杉と喜んでいた。
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