生意気なハケン君
その日の夜、仕事が終わり家路に向かう私の手には、

スーパーで買った半額の惣菜と、
チューハイの缶、二つが入ったビニール袋。





夜空には満月と欠片ほどの小さい星達が浮かんでいる。




駅前から少し離れた閑静な住宅街を抜け、


外灯が転々としかない人通りの少ない夜道を一人歩く。






「……全く何なのよ、あの彼は」





ハァ~と深いため息をついて肩をガックリと落とす。






会議室で別れた後、彼は私の部署を訪れて、



何食わぬ顔で退職する社員から仕事の引き継ぎをしていた。





うちの会社は私服出勤の為、皆個々の身なりをしていて、


彼もインナーにTシャツ、上からシャツを羽織ってジーンズというラフな格好をしていた。





周りから見ればイケメンの好青年がやってきたと思うだろうが、



あんな一件があったせいか、私だけは別の目で見てしまう。






一ヶ月間だけとはいえ、



上司の私に生意気な口を聞いた事。





一番言われたくない、四文字の言葉を易々と使った事。






「生意気な部下がやってきたわね……」





どうしようも出来ない現実が更に疲れを増加させる。
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