生意気なハケン君
だが神城は進んで仕事を申し出てきたり、

同僚から頼まれた雑用など、嫌な顔を一つせずに取り組んでいたのだ。





まだ派遣されて何日もたっていないのに、

彼の存在はあっという間に周りに溶け込んでいて、





あたかも昔からいた社員のような存在に変わっていた。






「……課長がそこまで言うなら仕方ないですね。まぁ、せいぜい一人で頑張って下さい」






少し嫌味かかった言い方の神城は、

呆れたような表情を浮かべながら私のデスクから離れていく。







コツ…コツ……と少しずつ遠ざかっていく足音に、




何故か胸の奥が痛いほど強く締め付けられて……!








「――待って!」








シーンと静まり返るオフィス。




キーボードを叩く指が止まり、


画面に向けられていた私の目線は、
いつの間にか神城の後ろ姿を見つめていた。







「うちの会社は残業手当てつかないわよ?それでもいいの?」







私がそう言うと、


神城はゆっくりと振り返って、口角をあげながらこう言い返してきた。







「月曜日の昼飯はイタリアンがいいな」







その言葉に、いい店を紹介するわと私は初めて彼に笑い返していた。
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