生意気なハケン君
その容姿じゃ、世間の女性達が見逃すはずない。



私はバドワイザーを一口飲んで言った。






「そんな人いないよ。でも……気になる女性はいるけどね」






煙草に火を灯し、煙を吐き出しながらフッと笑う彼。



その横顔に私の胸が熱くなる。





アルコールなんかの熱さじゃ比べものにならないぐらい、焼けて焦げるような熱だ。




「宮下君の目に止まる女性は幸せ者ね。よっぽど綺麗な人なのかしら」







胸のドキドキ感がなかなか収まらず、

私は逃げるように彼から目線を反らした。






薄暗い店内に響くジャズの音色。


会話を楽しむ客の声。



カウンターでバーテンダーがシェイカーを振る音。





この何とも言えない店独特の雰囲気が昔から好きで、

仕事が早く終わった日には、直でここに足を向けていた。
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