一枝の寒梅






自分のこんな姿を見てしまえば、実感せざるを得ないのだけれど、どこか婚姻をするということが他人行儀な気がしてならない。



「さぁ、出来たわよ。よく似合ってるわぁ」


目を爛々と輝かせながら母がほっと肩を撫で下ろす。


その隣で父が早くも目を涙目にうるうるさせながら何度も「綺麗だ……綺麗だ」と唱えながらわたしを暖かな瞳で見つめる。



完成した自分の姿を見ても、やはりわたしの心はどこか他人行儀だった。


まるで、外見のわたしと内面のわたしが別々の人間のようだ。



しばらく母と父がわたしの白無垢姿に飽きずに感想を述べ、顔をうっとりとさせていた。


そこにふと、障子を開ける音がして目をやると留袖を身に包んだ女性が一人軽くお辞儀をした。



「ご準備は整いましたか? まぁ! お綺麗ですこと。立派な花嫁さんですね。お父様もお母様もこんな綺麗な娘さんを持って幸せ者ですわね」


女性はこの式を任せられている使用人の一人だろうか。


わたしの姿を一目見ると、今までも花嫁を見るたびに何度も言っているのだろう。不自然な程妙に語尾を上げ、慣れた口調でわたしを褒めたたえた。


その、大げさに言い放たれたありきたりな褒め言葉でさえも、今のわたしは何も感じない。


「花婿様もご準備が整ったようなので、座敷にご案内いたします」



皮肉にもわたしはその言葉に「褒め言葉はここまでにして」という切り替えが含められているような気がした。





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